久しぶりのボート釣りに行ってきた。今回は3度目。1回目は、晩秋の海で、やや波が高く、げろげろ吐きながら脂の乗った松輪鯖の大漁に歓喜した。これがトラウマになってしばらく止めた。翌年の晩夏にもう一度、そのときは、波が穏やかで、メバル・カサゴ・キスがぼちぼち釣れ、ボート酔いはしなかった。
さて今日は、雨上がりの晴れた春爛漫の釣りを満喫できることを心躍らせた。
穏やかな波止場より、堤防へ向かうと、ずしんとうねりを見舞った。外海に出ると1mの高波だった。目的の釣り場まで沖合い1kmぐらい、連れ合いのTさんに漕いでいただいた。
彼が、20代の頃より嗜まれており、何から何まで知り尽くされていて、すべてお任せさせていただいた。電話すれば、海上保安庁が助けに来てくれるから、ということである。
高波でも、波に向かって垂直に漕ぎ出せばなんでもない、とのことだ。
僕ら同年代の人と連れ立っては、もはや出来ない芸当である。
あっという間に、岸が彼方のほうへ見えるところまで来た。そこで碇を下ろして、仕掛け作りを着手した。
これまでは、なんともなかったが集中して根を詰めるのか酔いが廻ってきて怪しくなってきた。
身体も冷えてきて小便もしたくなってきた。
今日は、船酔い気味で小便を催すということに格闘する一日だった。
ボートのイスに座り、バケツを当て、出そうとしても出ないのである。膀胱には、パンパンに詰まっていて、早く出したいのに、出せない。むかつきと、波がゆらゆらするのとで気が散って出せないのである。それだけ排尿は集中するものだとは、思わなかった。
慣れれば簡単だよと、Tさんは、何度も排尿されていた。
しばらくずっと座りっぱなしでいる足や股に違和感を覚え、身体全体の神経系に異常をきたしているのかもしれない。
たまたま、真後ろにクーラーがあり、そこに座って高い位置に行けば出るだろうと期待したが、やはり出なかった。
やっぱり出ないですね、いやあ慣れると平気なんよ、という話で盛り上がっていると、大きなうねりが一つやってきた。それでバランスを崩して、とうとう海の中に落ちてしまった。
ざぶんと一回転して体勢を整えると、ボートは5m先にあった。そこまで平泳ぎをして、横から這い上がろうとすると、近くにいた別のボートのおじさんが、ダメだよ、後ろから乗らないと、と大声で叫んだのが聞こえた。
仕方がなく、もう一回海に落ちたところ、だんだん身体が冷えていくのがまざまざと感じられた。後ろまで廻りきらないところで、渾身の力で這い上がった。一発で乗り込めた。
ああ助かった。
びしょぬれにも関わらず、寒気はしなかった。
引き返そうか?といわれたが、いや大丈夫ですよ、しばらくそのままいた。
だんだん乾いていった。
嘘のように酔いが一気に醒めたことに気付いた。
戸塚流脳幹鍛錬法なんだな、と納得した。
しかし膀胱がパンパンなのは相変わらず。出そうにも出せず、午後1時半になった。9時半に出向してから4時間排尿していない。尿毒症にならないかと不安になった。
尿は、汗で出て行くらしく、なかなか臨界点まで行かないが、気になって釣りどころではなかった。
ようやく閃いた。
船底に膝を当てて上体を上げることを思い立った、足はイスに置いて、両手で船体つかみ膝立ちした。
それからバケツをかざすと、今度こそは、と期待した。
ことごとく期待を外されたが、一線を越えてきた感触を覚えた。よし、やった!
ここから一気に吐き出した。
バケツに4時間分とうとうと溜まった。
はあと一息して海に投げ捨てて、世界が変わった。
気付くと晴れが出て、波も穏やかになった。やっと釣りが楽しめる。
Tさんは、アナゴを、私は、ウミタナゴをそれぞれ一匹づつ釣り上げた。
それもつかの間、また風と波が強くなって、午後2時半、碇を上げた。
引き返して、着岸してボートから降りようとしたところ、また悲惨な目にあった。Tさんは先に、上陸して、はい降りて!と促されたので、ついあわててしまった。
立ち上がろうとすると、ずっとじっとしていた足がうまく動かせず、はい降りて!のペースについていけなかった。そのペースで立ち上がったところバランスを崩して真後ろにひっくり返って、ざぶんと気付いてみると周囲は海。2度目の海水浴となった。
足中の神経が行きわたらないところさっとというタイミングで降りるとバランスを崩してしまう。
水浸しになって陸に上がると今度は、寒気と震えが酷かった。
船宿の女将さんに、ヒーターを点けて頂き暖を取った。
ようやく半乾きになったところ、岐路に就いた。
車中で、船酔いしたときのおしっこの仕方位前もって教えてくださいよ、嘆き口を叩くと、いやあ、そんなこと考えもしなかったよ、と苦笑された。
若いときに始めると、酷い船酔いは体験するだろうけど、尿が出なくなることはないのだろう。
身体が冷えて排尿したくなって仕方がないのに出来ない、というのは、将来の体験を先取りした形になった。
ともあれ、年を取られてからボート釣りを始められる方、くれぐれもお気を付けください。
船酔いした中、イスに座りながらは出せませんので、慌てずに、両手で船を掴んで、膝を床に立て足をイスによりかけて、やれば、あの苦痛からすぐに開放されます。
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